dntでDeno-firstなデュアルモジュールを作る

dnt は Deno ベースのコードから Node.js 用のコードを生成するビルドツールです。dnt の使い方と、Deno および Node.js のモジュールを開発するデュアルモジュール開発について紹介します。

2022/1/115 min read
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はじめに

dnt は Deno で公式にリリースされたモジュールビルダーです。 Deno ベースのコードから、NPM 用のモジュールをビルドできます。

これには型定義ファイルの出力や、インポートマップの解決など、 Deno-first を後押しする機能が詰まっています。

今回は dnt を使って Deno-first なモジュールを作成し、 deno.land/x と NPM へのリリースを行う方法を紹介します。

余談ですが、記事全体として、広義のライブラリやパッケージという言葉を モジュールという単語で統一しています。 語彙の厳密性については考慮していませんのでご了承ください。

Deno と Node.js の違い

Node.js から Deno に変えることで、コードベースに現れる変化としては次のようになります。

  • インポートに必ず拡張子が必要
  • URL スキーマインポートのサポート
  • 型定義ファイルの出力ツールがまだサポートされていない

インポートに必ず拡張子が必要

Deno は暗黙の処理を行わないことを一つの指針としています。 Node.js ではできた .js の省略や index.js の特別化はしません。

この拡張子の有無が非常に厄介です。 NPM にあるビルドツールは、概ね拡張子があると上手く処理できません。

URL スキーマインポートのサポート

Deno は URL スキーマのインポートが出来ます。 これはさながらブラウザの様ですが、 ブラウザとの互換性を重視している Deno の哲学が反映された結果とも言えるでしょう。

型定義ファイルの出力ツールがまだサポートされていない

そもそも Deno だけであれば、型定義ファイルの出力は不要ですが、 後述するデュアルモジュールの出荷する際、NPM 用に出力する必要があります。

Deno ではまだ、型定義ファイルの出力のコマンドをサポートしていません。 Deno.emit Runtime API で、頑張る以外はないはずです。

一方、NPM の tsc はインポートパスに拡張子があると上手く処理できません。

Deno ベースのコードから型定義ファイルを出力するには、けっこう大変です。

デュアルモジュールの必要性

デュアルモジュールとはここでは NPM registry と deno.land/x registry に対するモジュールのことを言います。 このセクションでは、なぜデュアルモジュール開発が必要なのか説明します。

Deno と Node.js のモジュールシステム

Deno は NPM の資産を利用できます。前述の通り Deno は URL スキーマのインポートができます。 そのため、ES modules 形式でモジュールが提供されていれば、基本的には NPM にあるモジュールは CDN 経由で利用できます。

CDN として有名なのは skypackesm.sh ですね。

また、これらの CDN は型定義の提供もしてくれるため、TypeScript でも問題なく開発できます。

例えば lodash は次のように使えます。 ちなみに lodash は Deno 用のモジュール が提供されているので、そちらを使ったほうがいいですが参考までに。

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import { first } from 'https://cdn.skypack.dev/lodash'
first([1, 2, 3]) // 1
cli.tsts

deno run cli.ts

一方、deno.land/x にあるモジュールはどうでしょう。残念ながらこれらを Node.js が使える可能性はかなり低いです。 これは、Node.js のモジュール解決アルゴリズムが、package.json と密接にあることが起因しています。

モジュールシステムを作り変えるのは、かなり大変なことは想像に易いでしょう。

また、--experimental-loader でローダーを使ったインポートが出来なくはないようですが、現実的ではないでしょう。 詳しくは Dynamic import with HTTP URLs in Node.js が参考になるかと思います。

加えて、URL スキーマをサポートしたとしても、Node.js は TypeScript をサポートしていません。

Deno とデュアルモジュール

上記のことから、NPM の資産は Deno で使えるが、deno.land/x の資産は Node.js で使えません。 Deno の compat モードでも無理です。

現状はこの一方向性を受け入れなければなりません。

この時点で開発者には2つの選択肢があります。

  • 従前どおり Node.js ベースで開発し、NPM にリリースする。Deno での利用は CDN 経由
  • Deno ベースで開発し、deno.land/x と NPM へリリースする。

dnt がない世界では、Deno ベースのコードを Node.js 用にビルドするのにかなり手間がかかりました。 しかし、ビルドの問題が解決されれば、あとはリリースだけなので、そこまで負担にはなりません。

個人的には、今後新しいプロジェクトは、Deno ベースで運用していくのがいいのではないかと思います。

dnt でビルドする

さて、前置き長くなりましたが、実際にビルドしてみましょう。

なお、実際に運用しているレポジトリは TomokiMiyauci/isx にあるので、適宜参考にしてください。

とても小さなプロジェクトを例にやってみます。

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.
├── build_npm.ts
├── example.ts
└── mod.ts
bash

どうでもいいですが、 例中の isx というのは私が作っている is? というものを集めたコレクションです。

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import { isFunction } from "https://deno.land/x/isx/mod.ts"
export function call(value: unknown) {
if(isFunction(value)) {
return value()
}
return value
}
example.tsts
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export * from "./example.ts"
mod.tsts

この例では次の2つのことを行っています。

  • URL スキーマを利用したインポート
  • ファイルパスを利用した拡張子付きのインポート

これを Node.js 用にビルドするために、次のスクリプトを用意します。

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import { build } from "https://deno.land/x/dnt@0.7.4/mod.ts";
await build({
entryPoints: ["./mod.ts"],
outDir: "./npm",
package: {
name: "<package-name>",
version: Deno.args[0]?.replace(/^v/, ""),
description: "<discription>",
license: "MIT",
repository: {
type: "git",
url: "git+https://github.com/username/package.git",
},
bugs: {
url: "https://github.com/username/package/issues",
},
},
});
build_npm.tsts

バージョン情報はコマンド引数から渡すことが推奨されています。

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deno run -A build_npm.ts v0.0.1
bash

これを実行すると、outDir で指定したディレクトリ下に NPM 用のビルド結果が出力されます。

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npm
├── esm
├── node_modules
├── package-lock.json
├── package.json
├── src
├── test_runner.js
├── types
└── umd
bash

デフォルトでは、 ES Modules, CommonJS, 型宣言ファイルの出力と、型チェックおよびテストが行われます。 また、package.json は次のようになっています。

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{
"module": "./esm/main.js",
"main": "./umd/main.js",
"types": "./types/main.d.ts",
"version": "0.0.1",
"name": "<package-name>",
"description": "<discription>",
"license": "MIT",
"repository": {
"type": "git",
"url": "git+https://github.com/username/package.git"
},
"bugs": {
"url": "https://github.com/username/package/issues"
},
"exports": {
".": {
"import": "./esm/main.js",
"require": "./umd/main.js",
"types": "./types/main.d.ts"
}
},
"scripts": {
"test": "node test_runner.js"
},
"dependencies": {},
"devDependencies": {
"chalk": "4.1.2"
}
}
npm/package.jsonjson

ビルドスクリプトの package フィールドに指定したメタ情報および、エントリーポイントや依存関係が追加され出力されます。

すでに公開できる状態になっているので、あとは npm publish などで公開するだけです。

dnt と依存関係

依存関係がどのように解決されたか見てみます。例では isx という外部モジュールを利用していました。 しかし、package.jsondependencies フィールドは空です。

依存関係は NPM に同じものがあるとは限らないため、デフォルトでは fetch した上で、成果物に含まれます。

例えば esm ディレクトリ配下は次のようになります。

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npm
└── esm
├── example.js
├── main.js
├── package.json
└── deps
└── deno_land_x_isx_v1_0_0-beta_17
bash

deps 配下に依存関係が配置されました。また、依存関係の参照はファイルストラクチャーに合わせて書き換えられます。

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import { isFunction } from "./deps/deno_land_x_isx_v1_0_0-beta_17/mod.js";
export function safeCall(value) {
if (isFunction(value)) {
return value();
}
return value;
}
example.jsjs

ちなみに依存関係の型定義は types 配下に配置されます。

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npm
└── types
├── deps
│ └── deno_land_x_isx_v1_0_0-beta_17
├── example.d.ts
└── main.d.ts
bash

素晴らしいですね。

依存関係のマッピング

依存関係をマッピングすることも出来ます。 先程の isx というモジュールは deno.land/x にホスティングされていますが、 isxx という  NPM にあるものに変えてみます1

ビルドスクリプトを変更します。

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import { build } from "https://deno.land/x/dnt@0.7.4/mod.ts";
await build({
entryPoints: ["./main.ts"],
outDir: "./npm",
mappings: {
"https://deno.land/x/isx/mod.ts": {
name: "isxx",
version: "1.0.0-beta.17 ",
},
},
...
});
build_npm.tsts

mappings フィールドに NPM のモジュール名をマッピングします。 これでビルドすると次のようになります。

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{
...
"dependencies": {
"isxx": "1.0.0-beta.17 "
},
}
package.jsonjson

package.jsondependencies フィールドに加わり、依存関係の fetch は行われませんでした。

Node.js で利用された際、依存関係を事前にバンドルしてしまうと、2重バンドルが起こりやすくなります。

そのため、NPM に同じモジュールがあるなら、できるだけマッピングを利用したほうが良いと思います。

Deno.shim の注入

Deno のグローバルコンテキストと Node.js のそれは異なります。 そのため、Deno 固有のプログラムは Node.js では動きません。

dnt はそれらに対しても解決策を提供しています。

例えば fetch を使うプログラムを考えます。

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async function fetchHello() {
const req = await fetch("https://miyauchi.dev/")
const html = await req.text()
return html
}
example.tsts

Deno は fetch をサポートしていますが、Node.js ではサポートしていません。

このコードに対し dnt は デフォルトで Deno shim を注入します。

このコードをビルドすると次のような結果になります。

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import * as denoShim from "deno.ns";
export async function fetchHello() {
const req = await denoShim.fetch("https://miyauchi.dev/");
const html = await req.text();
return html;
}
exmaple.jsjs
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{
...
"dependencies": {
"deno.ns": "0.7.3"
},
}
package.jsonjson

deno.ns モジュールにより、Node.js でも実行できるようになります。

また、Deno shim の注入を無効にするには、// deno-shim-ignore コメントを該当コードの上に付けます。

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async function fetchHello() {
// deno-shim-ignore
const req = await fetch("https://miyauchi.dev/")
const html = await req.text()
return html
}
example.tsts

この他にも、マルチエントリーポイントや、 bin スクリプトの生成もサポートしています。

デュアルモジュールのリリースフロー

以上で dnt の紹介は終わりですが、ここからは実運用上問題になる点について触れたいと思います。

最初に悩むのは恐らくリリースフローです。 2 つのレジストリにリリースしなければならないため、手動でのリリースは避けたいです。

Deno は元々サードパーティモジュールのリリースを GitHub の webhook を使うように推奨しています。詳しくは Publish a module を参考にしてください。

GitHub のリリースタグの生成をトリガーに webhook を呼ぶように構成します。

Deno へのリリースはリリースタグの生成なので、NPM へのリリースも同じようにするのが自然でしょう。

GitHub Actions だと次のようになるかと思います。

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name: relase-node
on:
release:
types: [published]
jobs:
release:
runs-on: ${{ matrix.os }}
strategy:
matrix:
os: [ubuntu-latest]
deno: [1.16.0]
steps:
- name: Checkout
uses: actions/checkout@v2
- uses: denoland/setup-deno@v1
with:
deno-version: ${{ matrix.deno }}
- name: Get tag version
if: startsWith(github.ref, 'refs/tags/')
id: version
run: echo ::set-output name=TAG_VERSION::${GITHUB_REF/refs\/tags\//}
- name: npm build
run: deno run -A build_npm.ts ${{steps.version.outputs.TAG_VERSION}}
- uses: apexskier/github-semver-parse@v1
id: semver
with:
version: ${{steps.version.outputs.TAG_VERSION}}
- name: Set tag
id: tag
run: |
DIRTY_PRELELEASE=${{steps.semver.outputs.prerelease}}
PRELEREASE=${DIRTY_PRELELEASE%.*}
[ "$PRELEREASE" = "" ] && TAG="latest" || TAG=$PRELEREASE
echo ::set-output name=RELEASE_TAG::$TAG
- uses: JS-DevTools/npm-publish@v1
if: startsWith(github.ref, 'refs/tags/')
with:
token: ${{ secrets.NPM_TOKEN }}
package: ./npm/package.json
tag: ${{ steps.tag.outputs.RELEASE_TAG }}
yaml

リリースタグのパースが若干複雑ですが、やっていることはシンプルです。 例えば v1.1.0 タグが発行されたとします。

GitHub Actions のコンテキストから v1.1.0 を抜き出し、package.json のバージョンにします。

先程の例で、バージョン文字列を Deno.args[0]?.replace(/^v/, "") で変換していたのはこのためです2

その後、semver のパースをし、NPM のリリースタグを導出します。 通常は latest タグを付ければいいですが、プレリリースの場合はそれ用のタグを付けてあげます。

というように若干面倒ですが、GitHub のリリースタグの生成で 2 つのレジストリへリリースが出来ます。

参考までに、上に加えてわたしは semantic-release を使って conventional commits で GitHub リリースタグ の自動生成も行っています。 詳しくは TomokiMiyauci/isx を参照してください。

Deno とテスト

最後は宣伝です。

コードベースを Deno に移したときに直面するのがテストの問題です。 Deno は標準でテストランナーおよび、標準モジュールとして アサーションモジュールを提供しています。

これである程度の規模のテストは十分機能します。 しかし、Node.js のデファクトスタンダードである jest には、機能的には劣ります。

そこで jest like なテストフレームワーク unitest を開発しています。

jest と同じ expect 構文を採用しながら、Deno-first でユニバーサル性とバンドルサイズをかなり意識しています。 現状 Deno を採用する上での最大の障壁の一つである、フロントエンドのテスト環境もサポートする予定です。

ぜひお試しください。

また、デュアルモジュールを作るとき、両方のレジストリで名前空間が空いているのか調べる手間があります。 これを解決する registerable というサービスを提供しています。

各モジュールレジストリに名前空間が使用可能かどうか問い合わせることが出来ます。

こちらも合わせてご利用いただけると嬉しいです。


  1. どちらも私が作ったものです。名前空間が取れず違う名前になりました。
  2. GitHub Actions 上で変換してももちろん OK ですが。

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